三田健一の映画の小噺④ 鈴木亮平主演「HK/変態仮面」

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週刊少年ジャンプの黄金期を支えた漫画、と言われるとあなたは何を想像するだろうか?『ドラゴンボール』『るろうに剣心』『ろくでなしブルース』などが有名だと思われるがどうだろうか。さて、実は今挙げたいくつかの作品には共通点がある。一つは現在に至るまで高い人気があるという事、もう一つは過去に実写映画化しているという事だ。漫画を原作とした実写映画化は失敗することが多く、茨の道だと言われる事が多い。そんな中、近年の漫画実写映画化で誰もが驚くヒットを飛ばした作品がある。そう、それが今回ご紹介する「HK/変態仮面」だ。

「HK/変態仮面」のあらすじ

HK/変態仮面出典:http://tigerdriver.blog.so-net.ne.jp/2013-04-26

刑事の父親と、SMの女王様の母親。その間に色丞狂介(鈴木亮平)は生まれた。現在は母親と二人で暮らしており、高校生の狂介は学校の拳法部で日々汗を流していた。そんな最中、狂介のクラスに姫野愛子(清水富美加)が転校してくる。まさしく一目惚れという勢いで恋に落ちた狂介は、拳法部のマネージャーになった愛子に想いを寄せながら青春の日々を送る。ある時、銀行強盗事件が発生、犯人は愛子ら一般人を人質に取って建物に立てこもるという状況に出くわす。愛子のために救出作戦を決行することを決める狂介だったが、覆面を被って変装しようとした際に、間違えて女性のパンティを被ってしまう。その瞬間、彼に眠る変態の素質が覚醒し、彼を超人ヒーロー“変態仮面”へと変身させたのだった。

ある意味日本を象徴するギャグ漫画が原作

HK/変態仮面出典:http://blog.livedoor.jp/nurupoxx/archives/39190556.html

原作となった漫画『究極!!変態仮面』は、あんど慶周によるギャグ漫画。週刊少年ジャンプの黄金期と言われる1990年代に紙面を色々な意味で賑わせた。ギャグ漫画としての特徴は、笑いが完全に下ネタ寄りのものであり、そこにシュールでナンセンスな下らなさを加えるという点にある。『それは私のおいなりさんだ』という決め台詞で颯爽と現れる、ほぼ全裸の変態ヒーローには思わず頬が緩ませられてしまう。繰り出される必殺の変態技のオンパレードに、もはや笑いをこらえる事は不可能。これは立ち読みだけじゃ耐えられないぞと今週の週刊少年ジャンプを購入した方も多いのではないか。
日本人の下ネタにかける情熱は、世界でも目を見張るレベルだと聞いた事がある。実際に“HENTAI”という単語はそのまま英語圏でも伝わるというのだから驚きだ。日本人は外面が良く、つつましく柔らかな物腰であると同時に、裏では性的な欲求に素直である意味野蛮な民族だと思われているのかもしれない。その点、その下ネタをヒーローギャグにしてしまう日本人が現れたとしても何らおかしい話ではない。変態仮面の変態ギャグはお国柄が出ていると言ってもあながち嘘ではないのだ。

実はあんまり原作に忠実じゃない映画化

HK/変態仮面出典:http://ur0.biz/CQ5T

さて、話が漫画の方にそれたので、映画の方に戻そうと思う。この映画「HK/変態仮面」について言わなければいけないポイントがある。それは、この映画は『失敗する実写映画化』にありがちな、ストーリーを映画向けにこねくり回して作り上げられた作品ということだ。漫画が原作である場合は、多くの人が求めるのが『原作の内容を大幅に変えず、忠実に再現する』という事だと思う。だが多くの漫画作品は紙面でしか表現できないようなファンタジックな表現に満ち溢れており、それをそのまま実写映画化するのは到底無理な話だし、仮にそうされたとしても、単純に“映画”を見に来た人達は納得しないのではないかと思う。
本作「HK/変態仮面」に関しては、はっきりと『映画オリジナルストーリー』だと言える。ムロツヨシの個性的な演技が光る本作のライバルキャラでありボスキャラの大金玉男は、実は原作の『究極!!変態仮面』においてはチョイ役でしかない。それなのに本作では悪の親玉であり、全ての元凶である。最終的には巨大なメカに乗り込み変態仮面と対峙するなど大活躍している。
他にも細かい点を探せば突っ込みどころは様々だ。個人的には、原作の印象的な掛け声である『クロス・アウッ!』が『ク・ロ・ス・アウトォー!』という少々カワイコぶった響きに変えられてしまったのが悲しいと感じている。

主演の鈴木亮平の役作りに括目せよ!

HK/変態仮面出典:http://www.inven.co.kr/board/powerbbs.php?come_idx=2652&l=74032

変態仮面を演じる鈴木亮平といえば、その役作りにかける情熱が凄まじい事で広く知られている。近年では少女漫画の実写映画化作品「俺物語!!」にも出演し、巨漢の主人公・剛田猛男を演じた。余裕のある方は「俺物語!!」の情報を調べてビジュアルを確認してみて欲しい。きっと驚かされるはずだ、この男(剛田猛男)とこの男(変態仮面)が同一人物だという事に。
変態仮面のコスチュームはほとんど全裸。そのためにムキムキの筋肉は必須と言えよう。主演の鈴木亮平は、そこをよく理解している。変態仮面を完璧に演じるために、なんと一度15kgも体重を増やした後に脂肪をそぎ落とすという苛酷な肉体改造を行ったというのだ。これに関しては、もう本当に天晴れとしか言いようがない。そのおかげでこの映画のビジュアルはとても絵になるものとなり、原作の読者から『こんなの変態仮面じゃない!』と言われる事もないだろう。まさしく漫画から飛び出してきたような筋肉質のボディは素直な称賛に値する。
「俺物語!!」に出演する際は、これまた役になりきるために体重を30kgも増やして撮影に臨んだと言われている。自分の体重で悩んだ事のある人にとってはその“30kg”という数字がどれだけ凄いものかが窺い知れるだろう。鈴木亮平という俳優、これからも目が離せない存在であることは間違いない。

お気に入りキャラクター・偽変態仮面

HK/変態仮面出典:https://queerdrama.blogspot.jp/2014/08/hk-hentai-kamen-2013.html?view=classic

主人公の強烈なインパクトにばかり目が奪われがちだが、私のイチオシキャラクターは偽変態仮面である。彼の凄さは一言で表すならば『変態である』という事に尽きる。変態仮面も十分に変態なのだが、偽変態仮面はその上をいく変態なのだ。例えば、自分の“おいなりさん”をあえて小さく見せるような恰好をして、女子に指摘される屈辱が快感だというのだ。その上、変態仮面との直接対決の際には隙をみて自分の乳首を弄りだすという余裕を持ち、対峙していない時でも『これは放置プレイだ』と思い込む事で勝手に快楽を得るという、本当におかしな精神の持ち主(褒め言葉)である。
これには流石に本家変態仮面も敗北を認めざるを得ず、物語中盤で変態仮面は挫折を経験してしまう。自分よりも圧倒的に変態度合いの高い存在に破れ、自分の存在意義を見失ってしまうのだ。ヒーローモノの映画に必要な『挫折と克服』という要素を演出する上でも、やはり偽変態仮面と言う名の敵キャラクターは必要である。私の中では、ラスボスの大金玉男を完全に食ってしまった印象まであるほどだ。その後、変態仮面がどのようなプロセスを経て復活し、どうやって偽変態仮面を倒すのかは注目して欲しい。変態仮面が気付いた、とある法則の間違い。その指摘こそがこの映画の一番の山場ではないかと思う。『お前がそれを言うんかい!』『お前がそれを言ってしまったら終わりやないかい!』と誰もが心の中で大阪弁で突っ込みを入れてしまうだろう。
不敵な笑みが似合う偽変態仮面役を務めるのは、ヤスケンの愛称で親しまれている安田顕。プライベートの彼はすぐに人前で脱ぎたがる『変態キャラ』として通っているらしく、偽変態仮面の役はピッタリだったと言わざるを得ない。自分を最大限に出した彼のイキイキとした演技は、ファンなら間違いなく見逃せない一作だ。

終わりに

HK/変態仮面出典:http://www.cinema.com.do/detalles.php?tm=204342

前回の記事「ストリートファイター 暗殺拳」も、ゲームの実写映画だった。そちらでも色々と語らせてもらったが、結局のところ私は実写映画というものが好きなのだと思う。原作が好きでしょうがない作品が映画化したとして、それが映画的な成功を収めたとしたら、私は素直に嬉しいと思うし、作品をいっぱい楽しめていると感じて何だか気分がいい。少し前の作品でいうと漫画が原作の「テルマエ・ロマエ」なんかは涼しい顔して結構大胆なアレンジを加えた映画化だったというのに、興行的にも大成功を収めている(アジア圏でのウケも良かったらしく、台湾に旅行に行った際に物凄く大きく「テルマエ・ロマエ」の看板が出ていてびっくりしたのを覚えている)。
私たち映画の受け取り側として、結局言いたい事は簡単だ。『できれば原作に忠実に作って欲しいが、それよりもまず映画として面白くないと!』ということである。この意見はワガママだろうか、それとも当然のものだろうか?たびたび私が話題にする「ドラゴンボール エボリューション」は原作者である鳥山明が後にハッキリと『作品として失敗だった』と語っている。期待が集まるほど、映画としての成功のハードルは高くなるのは十分に分かる。個人的には、それでもめげずに、実写映画化に取り組んでもらいたいと言っておきたい。失敗を恐れて映画が作られないことの方がよっぽど失敗である、と私は考えている。

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映画みちゃお!の映画情報

題名 HK/変態仮面
ジャンル コメディ
監督 福田雄一
出演 鈴木亮平
清水富美加
制作年度 2013年
本編時間 105分
製作国 日本

ライタープロフィール

三田健一
三田健一
26歳。自称インターネット長文屋さん。
文字書きとして創作活動をする傍ら、2016年より映画みちゃお!の編集担当Aとして勤務。
好きな食べ物はバウムクーヘンと天下一品ラーメンです。

ライター:三田健一