人間の尊厳と戦争の本質へ迫る戦争映画の傑作「野火」

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戦争映画の新たな傑作

いわゆる戦争映画にも数多くの傑作があります。海外で言えば「地獄の黙示録」などがそれになるかと思いますが、近年制作された中でも光る一作がこちらの「野火」になります。

野火出典:http://www.voice-mito.com/archives/1762

2015年に公開されたこちらの作品は、塚本晋也監督による自主制作。もともと、1959年に大岡昇平の小説を映画化されていますが、それを現代にて塚本監督が取り組んだ野心作です。自主制作での戦争映画というハードルの高い作品ではありますが、ヴェネツィア国際映画祭に正式出品が決まったりと、完成度の高さは世界的にも評価されています。

戦争から見えてくる人間の本質

野火出典:http://www.voice-mito.com/archives/1762

主人公である田村一等兵は、自身が患った結核から日本軍を追放されてしまいます。しかしながら、送り込まれたフィリピンの野戦病院は深刻な食糧難を抱えており、なんとここからも追放されてしまいます。居場所を失くしてしまった田村は、第二次世界大戦末期、つまり現地人ですら日本人に対して敵対心を抱いているなか、絶対的な孤独や飢えと戦いながらもなんとか生をつないでいきます。

その過程で見えてくる孤独の恐ろしさ、また、人間の生への執着など、人間の極めて本質的な部分が見えてくるのが本作の見どころでしょう。

戦争から人は何を感じるか

野火出典:http://www.voice-mito.com/archives/1762

本作では、戦時下の中での孤立というモチーフの中で、主人公がかつて抱いていた「神への関心」が徐々に息を吹き返していくのも一つのテーマとなっています。極限状態の中で徐々に狂人と化していく主人公が、その中での心のよりどころとして何を選んでいくのか?そして何を思っていくのか?という心象の部分が見えてきます。このように、戦争の残酷さというより、その中で生きていく人々が何を感じているのか?ということが見えるように描かれているのも本作の見どころであり、一般的な戦争映画との違いでもあります。

監督である塚本晋也氏は、本作を「現代の若者にも戦争というものについて考えてほしいと思い作った」と語っています。例えば、単に戦争の悲惨さを描いただけの映画の場合、それは画面としては極めて刺激的なものであるかもしれませんが、ともすれば表面的な描写に終始してしまうために、実際にそれを知らない世代からすれば、どうしても共感性の乏しいものになりがちです。

ですが、野火のように内面描写がしっかりしている作品であれば、自分に近いこととして見る人も考えることができ、言葉の良い意味で戦争を身近にとらえることができるでしょう。

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ライタープロフィール

ハニー・バニー
ハニー・バニー
邦画も洋画も何でも見る雑食派の映画好きです。人気のある鉄板映画より、クセの強い意外性抜群の映画が好きです。投稿者名はタランティーノ映画、「パルプ・フィクション」の登場人物の引用。

ライター:ハニー・バニー