歌声と、荒廃した街。岩井俊二「スワロウテイル」

 - 邦画

   

2004年公開の「花とアリス」で人気を博し、2016年3月には最新作「リップヴァンウィンクルの花嫁」が公開された映画監督・岩井俊二の、1996年の監督作である「スワロウテイル」。人気歌手・Charaが出演し、主題歌を歌っていることでも知られている本作ですが、まだ観たことがないという人が意外に多いんだそう。どのような物語なのか、その魅力はなんなのかに迫ってみたいと思います。

架空の都市に生きる違法労働移民・円盗たち

スワロウテイル出典:http://ananweblog.exblog.jp/25279158/

本作の舞台は、日本にある架空の都市・円都(イェン・タウン)。主人公は、""円が世界で一番強かった""という架空の時代に生きる移民たちです。一攫千金を夢見て日本へとやってきた違法労働者たちである彼らは、日本人たちから街の名と同じく円盗(イェン・タウン)と呼ばれています。物語の中心となるのは、母親が死んで行き場を失った少女アゲハ(伊藤歩)。そして、たらいまわしにされたアゲハを世話することにした娼婦のグリコ(Chara)、グリコの恋人であるフェイホン(三上博史)。どん底の生活から抜け出すことを夢見た彼らが、ひょんなことから知り得た偽札づくりという危険な手段で金を稼ぎはじめます。
日本語・中国語・英語の混ざった言葉を話す人物たちやごちゃごちゃとして荒れた街の様子は、演じているのが日本の役者であるのに、無国籍風の、架空の世界観を見事に成立させています。

グリコ役・Charaの歌声

スワロウテイル出典:http://blog.goo.ne.jp/sinacinema/e/f72b30a50ef1f70040aa980feebcd356

本作の魅力は作品の独特な世界観にもありますが、その世界観を形成する大部分に、円都に暮らす娼婦・グリコ役の歌手Charaの歌声があると思えます。作中、グリコはその歌声で円都の人々を魅了し、恋人・フェイホンの立ち上げたクラブ「YEN TOWN CLUB」で歌ったことがきっかけで歌手としての道を歩むことになります。Charaの歌声は非常に独特で、不思議に優しく、チャーミングで、まさに「人々を魅了する」もの。彼女の歌声が、この映画全体の空気を作り上げていると言えるでしょう。

印象的なシーンの数々!

スワロウテイル出典:http://blogs.yahoo.co.jp/sasatuka0626/1540992.html
無国籍な世界観、Charaの歌声と並ぶこの映画の魅力は、観た人の心に残るシーンの数々にもあると言えます。強制送還を免れ、喜び勇んで街を駆けるフェイホン。彼がふと振り返り、"何か"を見上げるシーンは、その見上げたものが何であったのか分かった時、思わず涙してしまうほどの名シーンです。また、映画冒頭の、亡くなった娼婦が霊安室で仲間の娼婦たちから葬られるシーンと、映画終盤でのとある登場人物の遺体を仲間たちが燃やすシーンは、意図的に重ね合わせて見ることができるもので、どちらのシーンの印象も深まります。グリコやフェイホンの仲間であるラン役・渡部篤郎の、痺れるほどカッコイイ!と思わせるセリフのある場面も映画の終盤に設けられており、この映画のぜひ観てほしいポイントでもあります。

予告編です。

公開から10年以上たった現在もなお、人々の心をとらえ続ける本作。個性的かつ魅力溢れる登場人物たちと、彼らが生きる、岩井監督独特の空気感を持つ世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

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題名 スワロウテイル
監督 岩井俊二
出演 三上博史
Chara
制作年度 1996年
本編時間 149分
製作国 日本

ライター:めのう