「ウェディング・バンケット」同性愛・LGBTをテーマにした、心に残る映画①

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本作は、「ブロークバック・マウンテン」(2005)と「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」(2012)で2度のアカデミー監督賞を受賞した台湾出身の巨匠アン・リーの長編映画2作目にあたる。

アン・リーは、長編映画デビュー時より“父と子”をテーマにした映画を三本製作していて、それらは≪父親三部作≫と呼ばれている。本作はその2作目でもある。

本作で、主人公の父親を演じているラン・シャンは台湾を代表する名優であり、「推手(すいしゅ)」(1991)、「ウェディング・バンケット」(1993)、「恋人たちの食卓」(1994)からなる≪父親三部作≫の全作品で主人公の父親役を演じている。

ウェディング・バンケット出典:http://kittsan.eshizuoka.jp/e96886.html

ストーリー

アメリカ・ニューヨークに住むウェイトンは、不動産業で成功した台湾出身の青年だ。また、ウェイトンはアメリカの市民権を得ている。彼は同性愛者で、白人青年のサイモンと同棲していた。

ウェイトンの両親は、ウェイトンの結婚を望んで強引な見合い話をしつこく持ち込んでくるが、彼が同性愛者であることを知らない。彼自身も両親に自分が同性愛者であることを話す勇気が持てないでいた。

ある日、父親の健康が思わしくないことを知ったウェイトンは、恋人サイモンの友人で中国・上海出身のウェイウェイとの偽装結婚を考え出す。アメリカの市民権が欲しいウェイウェイはその計画に乗ってしまう。

こうして、ウェイトンの結婚を知った両親は、はるばる台湾からアメリカにやってきた。計画通りウェイウェイと盛大な結婚式を挙げる。しかし結婚式の初夜、その場の勢いでベッドに入ったウェイトンとウェイウェイは関係を結んでしまう。

ウェイトンとサイモン、ウェイウェイの偽りの人間関係が続く中、ウェイウェイの妊娠が発覚してしまい……。

受賞歴

第43回ベルリン国際映画祭:金熊賞受賞

ウェディング・バンケット出典:http://kimageru-cinema.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/post_2fb6.html

作品分析

本作は、“父と子”をテーマにした人間ドラマであるが、同性愛という社会的なテーマも織り交ざっているのが興味深いところだ。

台湾とアメリカという異なる国における文化や言葉の違いから生じるトラブルや軋轢も巧みに描かれており、基本的にはコメディ・タッチの映画ながら重厚な社会派ドラマにもなっている。

約109分の映画だが、家族や同性愛、異文化交流など深く考えさせられる。また、移民の国であり、多くの文化が混在するアメリカを象徴した作品としても観ることができる。

本作が発表された同時代、アカデミー賞では「フィラデルフィア」(1993)でエイズを患った同性愛者の弁護士を演じたトム・ハンクスが主演男優賞を受賞し、第46回カンヌ国際映画祭ではレスリー・チャンが同性愛の京劇役者を演じた「さらば、わが愛/覇王別姫」(1993)がパルム・ドールに輝くなど、描かれる内容は異なるけれど同性愛者を主役にした映画が世界中で高く評価された。

成宮秋祥の映画レビュー

父と子、同性愛、異文化交流など、多くのテーマが混在した複雑な映画だが、実はそれほど複雑な感じはしなかった。どちらかと言えば明るいコメディ・タッチの映像が、本作が根底に内包する複雑さを程よく緩和していた。

ウェイウェイの妊娠が発覚して英語で大喧嘩をするウェイトンとサイモンを見ながら、英語を理解できないウェイトンの両親が『家賃について喧嘩しているのか?』と勘違いする場面には思わず笑ってしまった。

それでも最後はやはり深く考えさせられる。従来の家族のあり方に疑問を投げかけ、同性愛や異文化交流など現代にも繋がる諸テーマを深く考えさせるきっかけを我々に与えてくれている。

ウェディング・バンケット出典:http://juno0712.exblog.jp/24181015/

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ライタープロフィール

成宮秋祥
成宮秋祥
キネマ旬報(読者の映画評)に2年間で掲載5回。ドキュメンタリー雑誌『neoneo』(neoneo web)や『ことばの映画館』(ことばの映画館Web)に映画レビューを寄稿。映画交流会「映画の”ある視点”について語ろう会」主催。

ライター:成宮秋祥