第2章 『ミニシアターの存在意義』~ユーロスペース~

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―「この世界の片隅に」がヒットしてロングランしていますが

北條誠人さん:片渕須直監督の前作「マイマイ新子と千年の魔法」は、新宿ピカデリーなど松竹系で全国公開されました。しかし興行的に数字が伸びず早々に打ち切られました。ところが、作品を気に入った観客の声援を受け、ラピュタ阿佐ヶ谷を始め浜松や大分などのミニシアターがアンコールという形で再上映をして、それが全国のミニシアターに広がりました。結果的には興行成績が伸びていったのです。そんなことがあって、監督はミニシアターに支えてもらったという気持ちが強く、新作もまずはミニシアターでの公開を望んでいました。当然ながらミニシアター側も、完成前の段階から全国各地で盛り上げようと応援していました。
 公開当初はやや年配の男性が多く、初めて当館に来られたという方もいらっしゃいました。日が経つにつれ女性が増え、親子連れもいらしたりとかなり客層が広がりました。幅広い世代に伝わってきていると実感しています。
 映画サイトや新聞などで取り上げられてもヒットしなかったり、テレビで全く露出がなくてもヒットしたりと、一般的な媒体の宣伝効果が読めなくなっています。必ずしもSNSがベストとは言いませんが、やはり口コミ重要です。作品のクオリティが高いのは前提として、それを早い段階で観たお客さんが感想を具体的な言葉で個人のSNSなどに書き込むと、じわじわ拡散して集客に繋がっていきます。
 「この世界の片隅に」はクオリティが高く、各地の映画館が応援して、観て感銘を受けたお客さんが感想をどんどん拡散した結果、今のヒットに結びついた訳です。当たり前に聞こえますが、なかなか難しいことなんですよ。
 ちなみに当館の入り口に貼ってある看板は日本一大きいです(笑)

ユーロスペースロビーに設置された「この世界の片隅に」のスタンディやコメントボード

―ミニシアターの意義とはなんでしょうか

北條誠人さん:作家を育てることと、新しい映画も古い映画も等しい価値で見せるという2点だと考えています。
 「君の名は。」の新海誠監督作品の「雲のむこう、約束の場所」は2004年、「秒速5センチメートル」は2007年に、それぞれミニシアターのシネマライズで上映されています。先程お話しした「この世界の片隅に」の片渕監督の前作もそうだったように、拡大公開できない佳作を拾い上げて上映し、一人でも多くのお客さんに観てもらい次の作品に繋げるのがミニシアターの役目ではないでしょうか。
 最近ではシネコンもリバイバル上映に積極的です。とは言え、上映作品はメジャー系が中心です。ミニシアターは、莫大な予算の作品や知名度の高いものではなく忘れ去られつつある名画を、リバイバルや特集などを組んで上映することで未見の方にもきちんと伝える責任があると考えています。

DSC_0048「この世界の片隅に」の様々な感想が書き込まれたコメントボード

―渋谷で創業35周年を目前に、最近の街並みはどう映りますか

北條誠人さん:2008年を最後に東京国際映画祭の会場が完全に六本木に移りました。渋谷のミニシアターは、2010年にシネマ・アンジェリカ、2011年にシネセゾン渋谷、2012年にシアターNと立て続けに閉館になり、2016年もシネマライズとシネクイントが閉じました。もはや渋谷には映画の街というイメージはありません。しかし一方で1989年に開業したル・シネマは、しっかりお客さんを掴んで健在です。2000年開館のシアター・イメージフォーラムも着実に客層を広げていると思います。
 渋谷駅周辺の再開発も途上ですし、渋谷パルコの改築が行われ、東急百貨店本店の向かいあたりにホテル建設の計画があるとも聞きます。この先何年かで、渋谷もかなり変わっていくと思います。ぜひ新しい映画館ができて欲しいですね。

ユーロスペース

ユーロスペース支配人 北條誠人(ほうじょう まさと)さん

―2017年公開予定のお薦め作品を教えてください

北條誠人さん:5月公開の、石井裕也監督最新作「夜空はいつでも最高密度の青色だ」に期待しています。最果タヒさんの詩集を映像化したもので、監督初のシリアス恋愛映画です。主演は、石橋凌と原田美枝子の娘で、成長株の石橋静河です。
 GW前頃には写真家ロベール・ドアノーのドキュメンタリー映画「パリが愛した写真家 /ロベール・ドアノー<永遠の3秒>」があります。誰もが一度は目にしたことのある、パリのカップルの写真の秘密に迫ります。実の孫娘が製作しました。
 4月公開の「わすれな草」というドイツのドキュメンタリーもいい映画です。かつて自由奔放に生きてきた母が認知症になったことで、家族を見つめなおすという作品です。実の息子が撮っています。ドアノーもそうですが、テーマこそ重いのにどこか温かみを感じるんですよ。身内が撮ってるからですかね。
 異色なところでは3月公開の「逆行」という映画です。ラオスでNGOの医療スタッフとして働いていたアメリカ人が、誤って人を殺してしまい異国の地を逃避行する話です。ドナルド・サザーランドの息子であるロッシフ・サザーランドが主演しています。

―2017年も魅力的な作品がラインナップされていますね。本日はありがとうございました。

ユーロスペース

【取材日:2016年12月13日 於 ユーロスペース 】

映画みちゃお!の映画館情報

映画館 ユーロスペース
ユーロスペース1 / ユーロスペース2 / ユーロライブ
客席数 92 / 145 / 178
音響 ドルビー・デジタル DTS / ドルビー・デジタル DTS / ドルビー・デジタル
映写機 DCP 35mm 16mm / DCP 35mm 16mm / DCP 16mm BD DVカム DVD Digiβ PC
スクリーン 2900mm×6815mm / 2900mm×6815mm / 2500mm×5875mm ※シネスコ
住所 東京都渋谷区円山町 1-5 KINOHAUS 2F&3F
TEL TEL 03-3461-0211
FAX 03-3770-4179
公式サイト http://www.eurospace.co.jp/
代表 堀越謙三
支配人 北條誠人
歴史 1982年(昭和57年)渋谷区桜丘町にて開館
2006年(平成18年)現在地に移転

ライタープロフィール

映画みちゃお!取材担当

ライター:映画みちゃお!取材担当