第1章 『商店街にある映画館』~桜井薬局セントラルホール~

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<映画みちゃお!>では新たな読み物として、「なんでも聞いちゃいます、映画にまつわるあれこれ」というコンセプトで連載を始めます。

第1弾は~劇場支配人編~ということで、宮城県仙台市にある老舗のミニシアター、桜井薬局セントラルホールの支配人に話を伺いました。(全3回)


桜井薬局セントラルホール 遠藤 瑞知

桜井薬局セントラルホール支配人 遠藤 瑞知(えんどう みずとも)さん

―始めに映画館の歴史からお聞かせください

遠藤 瑞知さん:1979年12月15日に、現在のビルの新築とともに映画館<日乃出セントラル>としてオープンしました。オープニング作品は「チャンプ」(フランコ・ゼフィレッリ監督)で、併映は「インターナショナル ベルベット」でした。10年ほど前までは配給会社UIP(旧CIC / 2007年12月末解散)の専門館で、パラマウントやユニバーサルの作品をメインに上映していました。1994年に公開された「シンドラーのリスト」は、市内では当館だけの上映だったため、大入りとなり、今でも記録は破られていません。また、2004年公開の「ラブ・アクチュアリー」も、他で上映していなかったこともあり、配給会社いわく日本で最も長く公開した映画館だったそうです。

2000年頃から仙台市郊外にもシネコンが進出してきて、街中の映画館が減りました。当館もそれまで安定供給されていたメジャー作品がシネコンに優先されるようになり、自分らで作品を調達しなければならなくなったんです。UIPの解散もあり、その頃から現在のように公開規模は小さいけど良質な作品を上映するようになりました。
これまで経営母体が何度か替わりましたが、現在は合同会社仙台セントラル劇場が運営しています。
開館当時、仙台市内の商店街にある映画館としては一番新しかったのですが、現在では最古となっています。

―遠藤さんの経歴を教えてください


桜井薬局セントラルホール 遠藤 瑞知

ロビーの壁には、舞台挨拶などで来館した監督や出演者らのサインがびっしり

遠藤 瑞知さん:映像制作会社、広告代理店と経て、広告繋がりで菓子メーカーに転職したところ、それまでとは違って時間に余裕ができたため映画を見まくりました。見た映画の備忘録も兼ねて、ブログのようなHPを立ち上げ、どんどん感想を書き込んでいました。あるとき、そのHPがきっかけでタウン誌Kappoの映画(DVD)のレビューを書きませんかというお誘いがあったんです。好きな映画を見た感想を書いてギャラが貰える。独り善がりじゃなくて、雑誌に 認めてもらえる。自称じゃない映画批評家になれたんだと思いました。ちょうど 菓子メーカーを辞めフリーランスになった時だったのでありがたかったです。レビュー執筆に続き、ケーブルTV局に情報番組で毎週映画紹介を担当することにな りました。監督や俳優の方と直に会い、聞きたいことを聞ける機会が出来、映画 好きとしては、こんなラッキーはありませんでした。

2008年頃だと思うのですが、人伝に当時運営会社の桜井薬局さんから、街中にある映画館としてもっと盛り上げたいので協力して欲しいと相談がありました。そこで、ライブ会場という使い方の提案で、在仙のお笑い集団ティーライズのお笑いライブを提案しました。当時から彼らは毎月お笑いライブをやっていたの で、会場探しが大変でした。街なかに自分たちのフランチャイズができること を大変喜んでくれました。そんな縁もあって、2010年に入社しました。

―映画館の名前でもある桜井薬局さんとは?


桜井薬局セントラルホール 外観出典:Joytrip

JR・地下鉄仙台駅近くにあるクリスロード商店街の中ほどに位置する老舗薬局の上にある映画館

遠藤 瑞知さん:ビルのオーナーでもある<桜井薬局>さんは、創業170年以上にもなる老舗の薬局です。もともとの運営会社が映画館から撤退するとなったとき、商店街から映画の灯を消してはいけないと、経営を引き継いでくれました。現在は、合同会社仙台セントラル劇場が経営しています。唯一の仙台資本の映画館です。桜井薬局さんは、多岐に渡り応援してくれていて、ネーミングライツで、館名にその名がついています。

―映画館で寄席やお笑いライブですか?


桜井薬局セントラルホール シアター

遠藤 瑞知さん:シネコンに対抗し、商店街のそれもビルの3階にある映画館を活性化するには、映画以外のエンタメを取り込んでみたらどうだろうかと思ったんです。
当館は、構造が比較的縦長です。スクリーンの前には高さのある舞台があって、ここで何かイベントができるのではないかと気づいたんですよ。

そこで思いついたのがお笑いライブでした。また、大人数じゃない、弾き語りのような音楽ライブにもいいなと思いました。すると、アーティストからは客席が近くて、みんなの表情がわかる。天井が高いから気持ちがいいと好評です。
また、講演会としても使われています。建築家の重松象平さんがいらして講演された時、「こんなにパキっとスライドが映されると気持ちいいね。外部の余計な 音が聞こえないからかな、観客の集中力も感じたし。」とおっしゃられました。

いろいろな可能性を感じました。ただ、一般のライブ会場と違い、様々な照明などはありませんから、そのあたりをわかってくれる方にご利用いただいてます。また、ティーライズなど在仙で活動している人達には頑張ってもらいたいし、そんな彼らをサポートしたいんです。

―落語やお笑いライブをやるようになって変わったことは?

遠藤 瑞知さん:お笑いライブに来る人は若い人が中心です。落語に来る人、音楽ライブに来る人=(イコール)映画を見にくる人とは限りません。でも、映画館に足を運んで もらうことが重要なんです。ほら、ポスターが貼ってあったり、チラシも並んで いるから手に取ることもできる。僕らが若かりし時、街のあちこちに映画のポス ターが貼ってあり、バスで通学しているだけで映画の情報が入ってきた。でも、 今は見られません。ですから、劇場に来てもらうことが大事なんです。ハチが蜜を求め花に集まってくる。蜜を探しているうちに花粉がついてその花粉を他に運 んでくれるように、映画ファン以外の人も様々なエンタメを求め映画館に来て、ついでに映画のチラシを見つけ興味を持つ、あるいは持ち帰ってくれて他の人にも伝わることもある。そういう風に地味な拡散を期待しています。

お笑いライブに来る若い人たちも来館した記憶が残ります。いつの日か、好みの作品を見つけていらしてくれるものと考えています。

第2章『911、そして震災からの変化』へ続く

【取材日: 於 桜井薬局セントラルホール】

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映画みちゃお!取材担当

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