三田健一の映画の小噺⑥ ジョセフ・ゴードン=レヴィット主演「50/50 フィフティ・フィフティ」

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人間という生き物は、生きているが故に『いつ死ぬか分からない』という恐怖と戦う運命にある。生きている限りは次の瞬間に交通事故に遭遇する危険性があるし、通り魔に襲われる可能性があるし、この文章を打っているパソコンが何の前触れもなく大爆発する事だってあり得るのだ。だが、それらの事故的死因よりも病気による死の方が可能性としてはまだ高いのではないだろうか。とりわけ人々を苦しめるのはガンの存在である。今回紹介する「50/50 フィフティ・フィフティ」は、ジョセフ・ゴードン=レヴィットを主演に据えて、若くしてガンの恐怖と戦う青年のドラマを描き出す。
監督はジョナサン・レヴィン。本作以外にはゾンビ男子の恋を描く「ウォーム・ボディーズ」などを手掛けた。監督のジョナサン・レヴィンと主演のジョセフ・ゴードン=レヴィット、共演のセス・ローゲンは2016年に映画「ナイト・ビフォア 俺たちのメリーハングオーバー」で再集結を果たしている。こちらはハチャメチャなコメディとなっており、カラッと笑って楽しみたい時にはオススメだ。

「50/50 フィフティ・フィフティ」のあらすじ

50/50 フィフティ・フィフティ出典:http://jun-t-1000.blogspot.jp/2013/12/5050.html

ラジオ局に務める青年アダム(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、腰に違和感を覚えて病院を受診したところ、脊髄ガンの発症を告げられる。5年間の生存率は50%だと聞かされ、一気にどん底に叩き落された気分になるアダム。家族や恋人は彼によそよそしく接するが、悪友のカイル(セス・ローゲン)だけは相変わらずのふざけた態度で接してくれた。ガンをネタにして女の子をナンパしようなどと誘うカイルに連れられるアダムだったが、心の中では自分の生死と見つめ合う葛藤の日々が続き、次第に平静を保てなくなっていく。アダムの内面だけでなく、周囲の対応も様々に変わっていった。

ジョセフ・ゴードン=レヴィットの主演作

50/50 フィフティ・フィフティ出典:http://point-mako.jp/?p=5895

『好きな俳優は?』と聞かれたら、必ずジョセフ・ゴードン=レヴィットと答えるようにしている。特に俳優に注目するという事もないのだが、それでもジョセフ・ゴードン=レヴィットは好きだとはっきり言える。それにジョセフ・ゴードン=レヴィットと繰り返し書くことによって、上手い具合に文字数を稼ぐこともできる。やったね!
本作「50/50 フィフティ・フィフティ」では突然ガンを宣告された青年を演じるジョセフ・ゴードン=レヴィット。幼い頃から子役として演技の世界に触れていた彼は、脇役や声の出演という形で映画に出演することが多かった。だが彼の存在を世に知らしめたのは2010年に公開された「(500)日のサマー」の主人公・トム役ではないだろうか。一目惚れを運命の恋だと信じて猛アタックするも、結果的に女の子に振り回され、あしらわれるというキャラクターを見事に演じ切った。彼自身の持ち味や細かい演技など光る部分をこれでもかと見せつけ、第67回ゴールデングローブ賞と第25回インディペンデント・スピリット賞、それぞれの主演男優賞にノミネートされている。
他にも、渡辺謙と共演したSFアクション大作「インセプション」や、ブルース・ウィリスの若き日の姿を演じた「LOOPER ルーパー」など、人に勧めたい注目作は山盛りだ。2017年1月には最新の主演作「スノーデン」も公開されている。彼の顔を見たことがないという人は、もしかしたら人生の何割かを損しているかもしれない。上にあげた主演作の中から一作選んで視聴してみるのはいかがだろうか。

ガンの恐怖と戦う、アダムの内なる葛藤

50/50 フィフティ・フィフティ出典:http://farnerdy.blogspot.jp/2013/07/sharing-is-caring-movie-5050-2011.html

ジョセフ・ゴードン=レヴィットは、アクションをやらせてももちろん栄えるのだが、本作「50/50 フィフティ・フィフティ」や「(500)日のサマー」のようにちょっとナヨナヨした役をやらせてもさまになる。彼自身の持つ甘いマスクと、それを絶妙に操る表情の演技がとても上手いのだ。だから今作のような『病気に悩む青年』なんていう役どころはピッタリだ。他人を一歩引いた位置から見る、冷めた表情が実によくできている。
だが、もちろんそればかりではない。この映画が終わりに向かっていく中で、アダムの感情が爆発するシーンがある。声にならない声を発しながら、車のハンドルに頭をぶつけるシーン。劇場でそのシーンを見たときから私はどうしても忘れられなくて困っている。達観したように見えるアダムの今までの立ち振る舞いは演技でしかなく、本心は怖い・逃げたい・死にたくないという気持ちでいっぱいだった。闘病生活を過ごす中で失うものがあまりにも多く、その重圧に耐えきれなくなったアダムの咆哮と嗚咽。私の脳裏に焼き付いて離れない。素晴らしい演技をみせてくれたジョセフ・ゴードン=レヴィットに拍手を送りたい。贔屓目に見なくてもインパクトの強いシーンなので、多くの人の心に残っているのだろうと思っている。

悪友カイルを務めるのはコメディ出身俳優セス・ローゲン

50/50 フィフティ・フィフティ出典:https://jajreviews.wordpress.com/2012/03/22/5050-2011/

この映画の真の主役の名を挙げるとするならば、それはもちろんアダムの悪友であるカイルだ。女好きでおチャラけた態度を忘れないそのキャラクターはこの映画でどこか浮いているが、それが『闘病記』というジャンルの中では一種の清涼剤になっているのもまた事実だ。
それどころか、この映画には彼の見せ場が多すぎる。カイルのバリカンでアダムの頭を丸めるシーンのやり取りの馬鹿馬鹿しさ、アダムの恋人の浮気を咎める際の容赦のない罵倒の連続、物語の結末に向けてアダムの心境が変わっていく中でそれを受け止めるしかないカイルの立場など……。先ほど散々ジョセフ・ゴードン=レヴィットについて語ったのだが、本作に関しては『セス・ローゲンさえ見ておけば楽しめる』とまで言い切れてしまう。コメディパートからドラマパートまで全てを担うセス・ローゲン。彼なくしてこの映画は存在しなかっただろう。
中でもカイルの行動原理が明らかになるシーンは衝撃的だ。わざとあからさまに作っており、観客の中にはわざとらしいと感じる人も多かっただろう。だがそれがかえって心にじんわりとした温かいものを残すのを私は感じた。そして、それに気づいた時のアダムの表情、戻ってきたカイルとのやり取り、そのどれもが素晴らしい。わざとらしい『お涙頂戴のシーン』で泣けるというのは素敵なことだ、このシーンでは思い切り感動してもらいたい。
近年では「ソーセージ・パーティー」という色々な意味で問題になりそうなアニメーション映画の主演から脚本・製作まで行った事で知られるセス・ローゲン。この映画では製作にも名を置いている。脚本を担当したウィル・ライザーとは旧知の仲であり、ウィル自身がガンの闘病に苦しんだ経験を忠実に脚本にするようにと助言したのもセス・ローゲンだという。ユーモアがありながら懐の大きさを見せつけてくれる彼に、ジョセフ・ゴードン=レヴィットと一緒に称賛を送りたいと思う。

カワ・ファッキン・ピース・オブ・ドッグ・シットな女

50/50 フィフティ・フィフティ出典:http://www.defilmkijker.com/2012/01/09/5050-2011/

アダムの恋人レイチェルは、彼が生存率50%のガンであると知らされた時には『自分も一緒に闘病生活を支える』と宣言して優しさを見せてくれる。だがその発言から数分もしないうちにカイルによって浮気現場を抑えられ、最終的にはまるで『自分は悪くない』と言いたげな表情でアダムの元から去っていく。
ここまで露骨に“クソ女”として描かれていると、もはや気分がいい。それまでの生活をアダムに頼り切っている様子も今思うと滑稽だし、彼女の芸術作品を最終的に燃やすシーンなんてとても楽しげで、何かのミュージックビデオのようだった。そして、結果としてアダムは次の新しい恋へと進む様子を匂わせて映画が終わる。新しい恋を見つけるだけなら元から恋人がいなければいいだけなのだが、なぜ彼女がこの映画に登場しているか。個人的な結論は『カイルとの友情を引き立てるため』、ひいては『カイルの全力罵倒シーンを演出するため』だけの存在だということになった。これに関しては言い過ぎな感じがしないでもないが、つまりは明確な“装置”として登場したに過ぎない。
物語の中盤でアダムの元から退いてからは、もう本当に出てこない。完全に映画に出てこないのだ。手術が終わったアダムの元へ、いてもたってもいられない彼女が現れる、なんてことはないのだ。露骨な“クソ女”表現に関しては、一部の方々を不快にさせそうで若干恐ろしいところがあると感じる。一緒に観る人は選んだ方が良さそうだ。

終わりに

50/50 フィフティ・フィフティ出典:http://cinekatz.com/2013/05/06/second-opinion-5050-or-a-shakespearean-jester-addresses-cancer/

実は私がジョセフ・ゴードン=レヴィットの存在を知ったのはこの映画が初である。以前から知ってはいる程度だったのだが、彼が私における『好きな俳優』だと分かったのがこの「50/50 フィフティ・フィフティ」である。今までさんざんこんな事を言いつつ、今年公開の「スノーデン」は実は観られていない。そのうち余裕がある時に鑑賞して、また掌を返したようにジョセフ・ゴードン=レヴィットについて語る機会が得られればなと思う限りである。
第6回にあたる本記事は、実は「インセプション」の話にしようかどうか迷ったというのをここに記しておきたい。脳内で最終的な結論として選んだのが「50/50 フィフティ・フィフティ」だったというわけだ。単純に理由を話すと、この映画が「インセプション」よりも知名度が低いからである。この記事を通して一人でも多くの人が「50/50 フィフティ・フィフティ」を知ってくれれば嬉しいと私は思っている。
ちなみに、日本人俳優では濱田岳が好きである。最近では携帯電話会社のCMなどで活躍する彼の出演作についても、いつの日か書いてみたい。

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映画みちゃお!の映画情報

題名 50/50 フィフティ・フィフティ
ジャンル ドラマ
監督 ジョナサン・レヴィン
出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット
セス・ローゲン
制作年度 2011年
本編時間 100分
製作国 アメリカ

ライタープロフィール

三田健一
三田健一
26歳。自称インターネット長文屋さん。
文字書きとして創作活動をする傍ら、2016年より映画みちゃお!の編集担当Aとして勤務。
好きな食べ物はバウムクーヘンと天下一品ラーメンです。

ライター:三田健一